美術家の言葉red05_next.gifマルティカルチュラリスム>キキ・スミス


  

  

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キキ・スミスが人間の身体に関係する作品を作り続けた意味ともいえるもの…

 「私にとって身体は便利な場所、便利な言語、ここに存在することを伝える有効な手段です。(中略)…

 1890年頃から、例えばアメリカは刑務所、エイズ、チャイルド・ケアの問題などを抱えていますが、身体はさまざまな社会的関心や社会の構成要素からインパクトを受けてきました。自分の身体、生、社会という三者間の直接的な相互関係を見る場として身体があったのは当然のことで、私も偶然穴のなかに落ちてしまったかのように夢中になってしまったのです」 ※7

 

人間の身体の後に、動物をテーマとして取り上げるようになった理由…

 「鳥の夢を見ることがある。ニ、三年前からかしらね、世界中のあちこちにある鳥と人間がひとつになったイメージが目につくようになってきた。鳥は人間の魂の代わりを務めているわけだし、個々の人間の存在そのものも自然界と深く、ときには悲劇的なかたちでつながっている。それで鳥の彫刻を作り始めたの。人間の身体を15年も作りつづけてきたけど、その分野も今となっては文化的な帰属意識だとか、人種、性差、性的嗜好といった問題が登場して、相当こみあってきたでしょう。わたしの作品だってそういう問題を扱ってきたわけだし、その事実を否定しようとは思わないけど、今は動物に集中してみたい。今世紀のアーティストで動物に関心を示したひとはあまりいないでしょう」

 「とにかく動物はわたしの作品の中では、自然な発展の線上にあると思っているの。最初に解剖図の素描をしたでしょう。分子や細胞を描いた。それからリンパ腺や消火器などの体内組織をとりあげて、つぎに皮膚、そうして全体像とさまざまな宇宙論に基づく彫刻を手がけた。そして、宇宙論を経て、動物にたどりついたわけ。もともと人間の身体を扱うアーティストになろうと思ったことはないの。たまたまそれをしばらくやることになっただけで、さっきも言ったように、それにとらわれるのは嫌なのよ」 ※4

 

作品に装飾的な要素を取り入れる背景にあるもの…

 「このニ、三年はずっとビーズを使ったり、物を縫いつけたりして、装飾の要素を美術に取り入れようとしてきたの。伝統に照らしてアーティストと認められるのは迷惑なのよね。そうなると上下関係が出てきて、これこれの主題、発想、技法、素材なりが当然のように美術とされる一方で、はなから相手にされないものも出てくる。

 わたしはピッピーの華やかだった時代に育ってきたし、あれは中産階級のルーツ探しでもあったけれど、それだけではなくて、古いヨーロッパの装飾美術の伝統の見直しでもあった。近代的なものに対抗して、陶器だとか花模様を再評価したわけでしょう。そういうものも、わたしの背景にあるのよね。

 それからわたしの作品は当然暮らしと並行しているから、本当に心をこめて作った作品からは、その頃のわたしの身に起こっていたことが透けて見える。ほかのだれかにそこまで見てほしいというわけじゃないの。作品を作家の告白みたいに見てほしくはない。ただわたしにとっては、作品が自分を知る手がかりになるというだけで」 ※3

 

キキ・スミスにとっての“アート”に対する考え方、またどのように制作すればよいと考えているか…

 「アートとはまさに偉大なスペースだと思います。結末を持たなくても許される探究がなされる数少ないスペースのうちのひとつと考えます。何かに到達する必要のないもの。自己表現のための素晴らしいスペース、自分の生に関してアートほど多くを語れるスペースは他にはないでしょう。アートは、仮説があってそれを立証する科学のようなものではありません。何も立証する必要はないのですから。

 ただ実例を作り続ければいいのです。それが何であるか見届けるため、それがどう感じているのか探るために、世界に存在するものの見本を作ればよいのです」 ※8

 

 


 

 

  

 

 

 

 

green07_next.gif キキ・スミスの「美術家DATA」

キキ・スミス関連の書籍>違うものも混ざっていますが…

 

美術家の言葉の引用先・流用先(リンクはamazonの該当ページ)

※3 『語る芸術家たち―美術館の名画を見つめて』  著:マイケル・キメルマン 訳:木下哲夫 発行:淡交社 2002  p110―111

※4 同上p116―117 ※6 同上 p121

 ※7 『THE NOW ART BOOK』 監修:ヴァルデマー・ヤヌシャック テキスト:セリア・リッテルトン企画編集:資生堂企業文化部ザ・ギンザアートスペース『ル・ミレニュム』編集部 平山景子、豊田佳子、深井さえ子 発行:光琳社出版 1996 p134,135

※8 同上 p135