美術家の言葉 red05_next.gif シュプレマティスム>カジミール・マレービッチ


  

  

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マレーヴィッチの“シュプレマティスム”を理解する上で…

「シュプレマティズムの対象欠如は実用に供されることのない無として、このような非対象性が行為する人間の本質、人間の真実となる。画家は、自分の活動が実用的対象性の外にあることを認識した。絵画は自然のように生き、作用するのであり、もはや詩作や建築のように実用的・実利的な目的を知らないのである…」 Kasimir Malewitsch:Suprematismus-Die gegenstandslose Welt,Koln 1962,S.164 ※9

「シュプレマティスムの体系は、あらゆる美学的美しさや体験、雰囲気から独立し、時間と空間で構成される。それはさらに、最近到達した私の概念、認識を表す哲学的色彩体系である」 K.S.Malevich, "Non-Objective Creation and Suprematism",op,cit,vol,I,p.120 ※1

「すべての芸術を通念的な画題から解放させ、見ることの意識を、物象を形として見るのではなく、それらができ上がったはずの物質の質量の方からアプローチして見る、とこのように再教育すべきである」  Troles Anderson編 :Essays on Art-Kasimir Malevitsch“From Cubist and Futurism to Suprematism”;“Form and Colour in Art” ※5

「新しい絵画のリアリズムはまさしく絵画のものである。なぜならそこには山のリズムも、空のリアリズムもないからである」 (『立体主義、未来主義からシュプレマティズムへ−−新しい絵画のリアリズムへ』1915 マレーヴィッチ) ※11

「絵のなかに、自然の一片、マドンナや恥知らずなヴィーナスを見るという心の習慣が消えるだけで、われわれは純粋で生きた作品に立ち会えるだろう。私は自分自身をゼロのフォルムに転換させ、ガラクタのつまったアカデミックな芸術のプールから引き出した」 1916年、「立体派、未来派からシュプレマティズムへ、絵画における新しいリアリズム」より ※2

 

マレーヴィッチが考えていた“色彩”とは…

「私には次のことがはっきりするに至った。それは純粋な色彩絵画の新しい骨組みは、色彩の要求にしたがってつくられ、構成さるべきだということである。第二に、色彩は描くために混ぜ合わさるべきではなく、独立した要素とすべきことである。そして、つくられる作品のなかでは集団的システムのなかの個として、しかも独立した個として参加すべきなのである」 1968年、マレーヴィッチ論文集『芸術に関するエッセイ』ボルゲン、コペンハーゲン ※3

 

「色彩は絵画の生命である。何を意味しているかが一番重要なことである。…今まで私たちは物象的なレアリズムに見慣れていた。しかし、それは色彩の描かれたユニットのレアリズムとは基本的に異なるものである。これらのユニットは本来の形や色と依存関係にあるのではなく、互いの位置付けによって初めて相互関係に入るのだ。

…物理学ならば、色と形とを個別の要素として取り扱っても良いはずだが、芸術の中ではそれはありえない。知覚作用のなかでも色と形とは二つの異なった要素としては意識されないからである。そして、シュプレマティズムの画面に現れてくる両者は、知覚作用そのものから成ったのである…動力の知覚作用を表現する線とか平面は黒とか白で描くことができる。それはダイナミカルな効力を成し遂げるためである。またシュプレマティズムのコントラストの場合、そこに形の互いに異なったスケール、すなわち相互関係に置かれているシュプレマティズムの構成要素がサイズ(次元)を変えていくなかで現れてくる。だが、それも形と色との関係があるのではなく、空間のスケールや諸次元に合わせてそのような結合が必要とされるからである」 ※6

 

マレーヴィッチが形態よりも重要視した“感覚”…

「立体派の創造を形態の上から分析しても、その本質はけっして理解できなかった。 感覚によって理解される世界は恒常的な世界である。意識が形態として理解する世界は恒常的でない。形態は消えたり変化したりするのが、感覚は消えも変化もしない。弾丸、自動車、飛行機、矢はさまざまな形態をとるが、動態の感覚はつねに同一である。

したがって宇宙現象の理解は、形態的特性からなされるのではなくて、それらの本質にたいする感覚によって達成される。 具現されるというとき、通常は形態上の具現をさしている。 形態的なメソッドによる現象分析からは形態の問題が明らかにされ、現象の興味深い形態的構造を知ることができるが、その後は感覚を重視しなければならない。感覚には形態的なメソッドではとらえられないところを補足する役割がある。 理性と感覚、この二つの基本的な人間の原理が結合しなければならない。両者の努力によってはじめて宇宙の理解が可能なのである。この状態でしか人間の能力は発揮されない。 宇宙にたいする形態的なアプローチのみでは、人間と宇宙との完全な融合に達することができない。

形態的なメソッドからは現象の形態性が発見されるが、実体ないしは精神と呼ぶべきものは見出せない。なぜなら、形態と色彩と精神というそれぞれの現象は、相異なるエネルギーの状態下にある。これらの状態が全体的に結合される地点が、私の身を定める宇宙である。そこでは、宇宙の精神的な諸力についての恒常的な感覚と、つねに絆を保たなければならない。確たるイメージがあるかないかは別問題である。しかし絆を保つうちに、新しい現象の創造によって表現されるであろうものの力が要請される。これらの現象の創造がなされるかどうかは、想像力の有無にかかわり、その安定度も想像力いかんで決定されよう。こうした努力のなかから、私の考えをゆるぎなきものにする多くの事柄が判明した。 人間と宇宙との融合は、形態ではなくして感覚においてなされる」1930年の自身の論文「絵画における色彩と形態の関係を規定する試み」から(訳 高見堅志郎) ※7

 


 

 

  

 

 

 

 

green07_next.gif マレーヴィッチの「美術家DATA」

マレーヴィッチ関連の書籍

 

美術家の言葉の引用先、流用先文献

※1 『MALEUVICH』 著:セルジュ・フォーシュロー 訳:佐和瑛子 発行:美術出版社 1995

※2,3 中原祐介 「白の逆説−浮遊する形のゆくえ」の中から 『美術手帖 特集マレーヴィッチ 絵画の無化をめざして』 1974年9月号 美術出版社

※5,6 V・チハーコヴァー 「非対象へのパースペクティヴ」 『美術手帖 特集マレーヴィッチ 絵画の無化をめざして』 1974年9月号 美術出版社

※9 『パルコ美術新書 カンディンスキー』 ペーター・アンセルム・リードル著 金田晉・森秀樹 訳 発行:PARCO出版 1996 

※11 『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』 著:桑野隆 発行:東京大学出版会 1996