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リクテンスタインが作品の中に“漫画”を取り入れることの理由を表すものとして…

 「物語の要素は現代絵画とまったく縁がない、というか、すくなくともぼくの絵とは関係がない。ぼくが漫画のイメージを使ったのは、反語的に、問いを投げかけるためなんだ。なぜ現代絵画にこんなものをもちこもうとしたのだろう? 

 ぼくは固有色に興味があった。盛期ルネサンスにはキアロスクーロが色遣いに変化をもたらしたので、衣裳を赤一色でべったり塗りつぶす代わりに、衣裳の半分を暗い赤に、残りを明るい赤に塗り分けるようになる。するとこの明暗が輪郭線からはみだしてくる。そして構図の中でそれが独立した模様を形作る。ファン・ゴッホまでくると、固有色で描いていると思うかもしれない。キアロスクーロがないからね。でも、ファン・ゴッホが色彩の強度と量を問題にしているのは明らかだ。色彩自体の表現力を活かそうとしている。だから意図はまったく異なる」 ※2

 

リクテンスタインにとって、主題とはなにか?を示すものとして…

 「絵は逆さまにしたり、横向きにして描くんだ。何を描いたのか思い出せないことも多くてね。描きはじめるときはもちろん何だかわかっているし、そんなのはおかしいか、それともへそまがりなのかもしれない。でもぼくは絵を描いている間は、そういうことを考えないようにしている。興味の対象は主題ではないんだな」 ※1

 

作品はシニカルな意味としてのとらえられがちであるが、リクテンスタイン自身にとっては絵画要素をも重要視していたという証明のひとつとして…

 「でも、皮肉だけでは絵は成り立たない。ぼくはどんな時でも、色彩と関わるものを何かつかみたいとも思っている。巨大な和音のような絵を描こう、色彩のポリフォニーがへんてこりんなのに、なぜかそれなりの効果を発揮するような絵を描こうと努めているわけだ」 ※4

 

広義における自作の解説ともなるものとして…

 「ぼくの扱う主題はどれも平面か、そうでなくとも出典は平面なんだ。つまり、部屋の絵を描くにしても、それは電話帳の家具の宣伝で見かけた部屋なので、出典は平面ということになる。ぼくが美術界の仲間入りをしたのは、フランク・ステラやエルズワース・ケリーといった抽象作家が、絵画そのものがオブジェとなり、彫刻と同じようにそれ自身が物であり、なにかほかの物を錯覚させることが目的ではないことを示す作品を描いていた頃だ。

 ぼくがこれまでの間に言おうとしてきたことも、それと似通っている。作品がたとえ何かを描写しているように見えたとしても、本質的には平らな二次元のイメージであり、それ自体がオブジェだということだね」 ※5

 

ブラシュストロークを作品の中に取り入れたことの意義…

 「ドイツ表現主義の作品のいくつかについては、筆遣いの痕跡(ブラシュストローク)が特徴のひとつといえるから、そのことを考えながら私は、私の最初のブラシュストローク・ランドスケイプを制作したのである。

 だがこれらの作品はただ漫画風のブラシュストロークしか持っていなかった。後になってからは、同じ作品のなかに通常の自発的なブラシュストロークとが随分含まれるようになった。真のブラシュストロークを描き加えるということは、その両者の違いは明白なのだが、私がやりたいと思っていたことの世界を広げてくれる役割を果たしてくれた。これらの絵画は、おそらくヴェネツィア派の画家たちとともに始まった絵画の筆触的な性格を強調することになっているのだ。それらは、おまえは単に自然のイリュージョンをものにしているのではなく、絵画を描いているのだ、ということを強く示しているし、さらにそこには、ブラシュストロークのもたらす固有のスタイルとある種の勇壮さとが生まれている」 ※6

 


 

 

 

  

 

 

 

green07_next.gif リクテンスタインの「美術家の言葉」

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美術家の言葉の引用先・流用先原典

※1 『語る芸術家たち 美術館の名画を見つめて』 著:マイケル・キメルマン 訳:木下哲夫 発行:淡交社 2002 p126

※2 同上 133―134 ※4 同上 p138 ※5 同上 P135

※6 『ニューヨーク・アーティスト50人』 著:リチャード・マーシャル 肖像写真:ロバート・メイプルソープ 訳:木島俊介 発行:同朋舎出版 1992 p69