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 プロバガンタ的だ、と批判されることもあるハーケの作品。ハーケ自身は、芸術と政治的、社会的な側面との関連についてどのように考えているかを示すもののひとつとして…

 「わたしたちが『形式(フォルム)』と、とりあえず呼んだものに、どちらかというと興味を持つグループのなかには、すべての政治的参照項とは、クレメント・グリーンバーグが呼ぶところの「芸術以外の添加物」をそれに導入して芸術を毒するものだ、と考える相当数の審美家たちがいます。こうした審美家たちにとっては、問題となっている作品はジャーナリズムにしかすぎない、あるいはもっと醜い場合は、ナチスやスターリン主義に比較できるプロパガンダにすぎないんです。彼らは、他の色々な作品のなかで、わたしたちの仕事が権力から認められるには程遠いということを知らないです。この論拠の元には、芸術の歴史を作っているものは社会的空白のなかに投げ込まれたものであって、結局、芸術が作られた環境についてはいっさい語らないのだ、という仮説があります。

 本当は、芸術家は自分たちの時代の政治的、社会的決定要因についてたいへん自覚していたのです。たいてい彼らは、特定の定められた目的のために役立つ作品を創造しました。西洋においては、十九世紀以来、教会や王族の注文の消滅と共に、状況はもっと複雑になりました。ですが、すでに十七世紀のオランダのブルジョア芸術が、集団的・社会的雰囲気の価値や態度、またその時代の特定の人々の価値や態度、考え方の表明として存在し続けていたことを明らかにしています。原則的には、それ以来、何も変わっていません。芸術作品とは、芸術家がそれを望むと望むまいと、イデオロギーの刻印なのです」 ※4

 

ハンス・ハーケが影響を受けたものの、ひとつの例題として…

 「しかし、ゲームは閉ざされているわけではありません。ナチス体制のときにさえ、ベルトルト・ブレヒトは、亡命の身でありながら、ドイツでどのように真実を言うことができるのか、自ら考えていました。「真実を書くことの五つの困難」という1935年の彼のエッセイのなかに、真実を書くために必要なもののリストが挙げられいました。すなわち、それを書く勇気、それを見分ける知恵、それを武器として活用する術、手中にあるもののなかから有効であり得るものを選択する良識、そして、大勢の人たちのなかでそれを暴く巧妙なやり方です。幸いにもわたしたちは今日、ファシスト体制の制約下で仕事しているわけではありません」 ※5

 

ハーケが作品としてよく取り上げるあるものの多重構造・両面性(もっと妥当な言い方があるのでしょうが)は、いたるところにあるということを示す一例として…

 「美術作品を珍種の蝶みたいに壁に掛けると、背景から切り離されてしまう。絵の美しさにうっとり見ほれることになって、わたしだってそのこと自体になにも文句はないけれども、しかし美術にはそれ以上の何かがある。美術館は意識の世話係だ。わたしたちに歴史の解釈を与え、世界をどう見るか、その中に自分自身をどう位置づければようかを教えてくれる。よくいえば偉大な教育機関だし、悪くいえばプロパガンダの道具にすぎない。その両面があるわけだ。このことはふだんあまり認められていないし、それにはたぶんそれなりの理由があるんだろう」 ※3

 

 批判と問題提起を続けるハーケ自身のスタンスの取り方のひとつとして…

 「いく世紀にもわたる集団的知覚の歴史や、わたしが個人的に知った歴史は、わたしに絶対ということを信じさせてはくれません。わたしが芸術分野でおこなう判断と同様に、わたしの規準が普遍的有効性を持っていないこと、そして不断にそれらの規準を再審に伏さなければならないことを理解すると同時に、ある価値体系によって導かれている他の領域に関するわたしたちの思考や行動も、再審しなければならないと思います」  ※6

 

 ハーケ以後に増えてきたポリティカル・アート系の作品群。そこから、)ハーケの制作思考を垣間見ることができるものとして…

 「志はよくても視覚的なおもしろみのない作品は苛立たしい」 「背後にある原則ではなく、作品のつくり方が問題なんだ」 ※1

 「私の作品はある特定の都市、特定の歴史をもち特定の状況下にある都市で制作されます。したがってその都市で暮らす人にとっては私の使うイメージにしても、政治的、社会的なスローガンなどにしても日頃親しんでいるものなのです。ところがその都市をたまたま訪問している人にとっては、理解しづらいものになってしまいます」 ※7

 

 


 

 

  

 

 

 

green07_next.gifハンス・ハーケの「美術家DATA」

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※1 『語る芸術家たち―美術館の名画を見つめて』  著:マイケル・キメルマン 訳:木下哲夫 発行:淡交社 2002  p215―216

※2 同上p228   ※3 同上 p221

※4 『自由-交換―制度批判としての文化生産 ピエール・ブルデュー&ハンス・ハーケ』... 訳:コリン・コバヤシ 発行:藤原書店 1996 p111―112  

※5 同上 p138 ※6 同上 p83

※7 「ハンス・ハーケ 社会を批判する作品」 編:美術手帖編集部 『現代美術 ウォーホル以後』 発行:美術出版社 1990 p47