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フィンレイ自身が危機感を抱いていることと自身で信じていること、つまり制作活動の根本に据えているある考え方を示すものとして…

 「ようするに、価値の体系は自動的にヒエラルキーを形成するものだから、これは廃絶すべきだという考え方があり、このように民主主義はすべてのものを完全に世俗化しようとしている、ということです。そしてこの点が私たちの文化にとっての危機であると私には思えるんです。つまり志(スピリッツ)を完全に捨て去ること、これは今まで、あるいは今現在も私たちの気づかぬところで進行している現象です」※1

 「…私が美の存在を信じているということ、そこには私たちが手を伸ばせば届くようななにかがある、ということです。美はつねに希望や憧憬といった感情と結びついています。これがある意味で美のもつ悲劇性といえるのかもしれません。人はいつも美しさを見出そうとするものです。けれども美しさの全体像をつかむことは不可能なんですね。ただ、部分的にしか見出せないものだからといって、美を求める心を捨てるべきではありません。少女の美しさであれ、風景の美しさであれ、美はつねに私たちの手に届かぬなにかを内に秘めているものです。私はこのような美の存在をきちんと認識した文化を切望しています。すべてのものをたんなる戯れごと(ファン)として終わらせてしまうような今の文化ではなく…」※6

 

フィンレイがダダ的行為をも行ったことの意図と意義についての解釈として…

 「つまりアートが現実にどれほどの力をもちうるか、だれも気づいていないわけです。このような現実的アート・イヴェントも、想像の世界の作品も、どちらもアートには違いありません。ただ、たとえばあなたが今ここで直面しているリアリティ、このリアリティのなかに私たちはアートを投げ込んで、この闘争に際して、本物のタンクをシミュレートしただけでなく、本物の警察官をも巻き込み、現実と想像の世界を合体させたわけです」 ※2

 

作品とそれが設置される場・環境との関係、および設置される作品に隠されている側面についてのフィンレイの考え方として…

 「文化はオブジェを光輝かせるものであり、オブジェそのものはたんなる不動の物体ではなく、ある環境の中に設置されると特別な意味をもつものである、ということがしだいに理解されるようになってきました。すなわち環境芸術というものが認識されるようになったということです。アートは現在、物質的環境と文化的環境というふたつの環境のなかに同時に棲息しています。しかし、私たちは往々にして文化的環境のほうを軽視しがちなんですね。古典的な造園術は、自然環境の改善を目指すと同時に、文化的環境の改善にも努め、庭そのものをすべてのものの関連のなかに、じつに整然と成立させているんです。こうしてはじめて人は文化とはなんであるかを理解できるんじゃないでしょうか。それはときには抑圧的であり、ときには開放的でもありますが、いずれにせよ、けっして私たちの生活と無関係なものではありません」 ※3

 

フランス革命の闘士の名前などを作品内で度々使用することについて…

 「私はフランス革命を崇拝し、ロペスピエールやサン・ジェストを敬愛しています。彼らには美徳というヴィジョンがありましたから。もちろんこの「美徳」という言葉はいまや汚れた言葉となってしまったので、これを使うと問題があると思いますが…。ロペスピエールは彼のもつ美徳ゆえに弾劾され、事実、高潔であったために処刑されたんですね。……(中略)…… つまり、たとえば最も単純なものを正確につくろうとすると、今の世の中では悪意に解釈される可能性があるということです。……(中略)……。つまり、努力が求められるわけですが、人は努力を惜しむものなんですね。ただ一方では、努力しない人間は悲劇だといえます。彼らは努力するよう期待されることもなく、忘れ去られることになりますから」 ※4

 


 

 

  

 

 

 

 green07_next.gif ハミルトン・フィンレイの「美術家DATA」

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美術家の言葉の引用、流用先

 「Special Interview to Ian Hamilton Finlay 美徳のポエト・ライフ 戦後民死守主義を超えて、真のリアリティへ」 インタビュー:海藤 和 訳:杉山説子 『美術手帖 1989年10月号』 発行:美術出版社 p63

※2 同上p64 ※3 同上p71 ※4同上p75 ※6 同上 p74